研究概要

大友研究室紹介

革新的無機材料の合成とデバイス応用

地殻は酸化物を主とする鉱物からなります.当研究室では,この身近で多様性に富んだ酸化物の新しい機能性を発掘し,様々な薄膜構造を作製することで次世代の環境・エネルギー技術あるいは情報化社会における革新的デバイスの創製を試みています. また,結晶成長ダイナミクスの解明とデバイス機能原理の探求を通じて「デバイスを化学」する学理の構築を目指しています.

図1は我々の研究方針の概念をチャートしたものです. 最新鋭の薄膜成長・評価装置と無機固体化学の実験ノウハウが研究を推進する基盤です. 完全な結晶を作りだし望みの機能を引き出すためには欠陥化学や表面科学,物性やデバイス特性の理解には固体物理や半導体工学を使います. これらをうまく適用し効率よく究を進めるためには,コンビナトリアルケミストリー(コンビケム)の技術を活用します.

結晶成長の原子レベル制御技術とコンビケム

超高真空装置と組み合わせたパルスレーザ堆積装置を用いて薄膜成長を行います. 酸化物の融点は非常に高いので,高エネルギーのレーザパルスで原料を瞬時に昇華し結晶基板上に堆積します. 創薬分野に限らず,固体電子材料・デバイス分野でもコンビケムが威力を発揮します. コンビケムとは,組み合わせ理論とコンピューター制御によって多品種少量の試料群を漏れなく一括合成(パラレル合成)し,高速評価技術と組み合わせてスクリーニングを効果的に行う手法です.

これらの技術を成熟させながら,これまで透明トランジスタや紫外発光素子を開発しました(図2). 原子レベルで制御された積層構造の界面では,結晶内部とは異なる電子構造を創り出すことができます. 私たちはこれまで知られていなかった新しい物性が酸化物界面において発現することを見出してきました. 例えば,絶縁体を接合した界面を金属に変えることが可能です(図3). このように精緻に構築された酸化物薄膜構造で新たな機能性を開拓していきます.

環境調和型材料と創・省エネデバイス

透明酸化物半導体は,安価な原料と生体環境に無害という優位性があることから,次世代の環境適用型エレクトロニクスを支える新材料として期待されています. 有機分子と組み合わせた太陽電池や超伝導・熱電材料の研究を通じて,環境調和型創・省エネデバイス開発に取り組みます.

透明エレクトロニクス物質科学の創成に向けて

透明エレクトロニクスの目標は,現行の集積回路の特性を維持したままデバイス全体の透明化を図ることです. 目に見えないことは,人にその存在を意識させないので,セキュリティセンサー,透明電子タグ,透光性ディスプレィなどのユビキタスネットワーク社会における様々な応用が考えられます. これらの応用を実現するために,ガラス基板上で単結晶薄膜を成長する低コスト製膜技術を開発していきます.

fig1「デバイスを化学」する酸化物研究のスキーム.

fig2透明高速電子回路と紫外発光ダイオード.

fig3酸化物人工超格子の顕微鏡像.

進行中の研究プロジェクト

  • H30-H32年度「電気化学的な電子状態変調による遷移金属酸化物薄膜超伝導体の創製」科学研究費補助金基盤研究(A)(代表)
  • H30-H32年度「電界効果による遷移金属酸化物薄膜の電子相制御と相変化メモリの室温動作実証に関する研究」企業との共同研究(代表)
  • H29-H30年度「酸化ガリウムの薄膜成長と導電性制御に関する研究」トヨタ先端技術共同研究(代表)
  • H24-H33年度「東工大元素戦略拠点(TIES)」元素戦略プロジェクト<拠点形成型>電子材料領域(分担)

終了した研究プロジェクト

  • H27-H29年度「遷移金属酸化物のエピタキシーと電子相解析による電極活物質の開発」科学研究費補助金基盤研究(B)(代表)
  • H25-H29年度「レーザー・放射光融合による光エネルギー変換機構の解明」光・量子融合連携研究開発プログラム(分担)
  • H24-H26年度「光化学活性を有する超構造磁性酸化物の創製」科学研究費補助金基盤研究(A)(代表)
  • H23-H25年度「超高耐圧酸化ガリウムパワーデバイスの研究開発」NEDO省エネルギー革新技術開発事業(分担)
  • H22-H25年度「ユニバーサル透明導電性基板の開発」先端的低炭素化技術開発(ALCA)(代表)
  • H19-H23年度「酸化物・有機分子の界面科学とデバイス学理の構築」JST-CREST「ナノ界面技術の基盤構築」研究領域(H19-H23年度分担)
  • H20-H22年度「透明酸化物の微細構造における量子物性の開拓」科学研究費補助金若手研究(A)(代表)
  • H20-H22年度「酸化物量子効果デバイスの開発」旭硝子財団「若手継続グラント」(代表)
  • H18-H19年度「高効率酸化亜鉛系青色・紫外発光素子の開発」科学研究費補助金基盤研究(B)(代表)
  • H15-H18年度「酸化物量子井戸構造を用いた発光素子及び光非線形性素子の開発」JST-PRESTO(個人研究型)「ナノと物性」領域(代表)
  • H15-H16年度「酸化亜鉛電界効果ドーピングと紫外発光素子」科学研究費補助金若手研究(A)(代表)